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宮城県の消費者教育推進計画の策定についての要請書

2014年06月12日

平成26年6月12日

宮城県知事 村 井 嘉 浩 殿

宮 城 県 消 費 生 活 審 議 会  御中

 

仙 台 弁 護 士 会

会長 齋 藤 拓 生

 

要 請 書

第1 要請の趣旨

宮城県の消費者教育推進計画の策定にあたり下記の事項を要請いたします。

1 消費者教育の推進に関する法律の趣旨と「消費者市民社会」の意義を普及、啓発する方策について検討し、消費者教育推進計画(以下「推進計画」)に盛り込むこと

2 消費者庁作成のイメージマップ等を活用して、①推進計画策定の前提として現状分析を十分に行い、②具体的なアクションプランを策定すること、③推進計画策定後の実施状況の検証・検証方法についても推進計画に盛り込むこと

3 消費者教育等の担い手の育成や、学校における消費者教育の充実等について、理由中に例示するような具体的方策を検討し、推進計画に盛り込むこと

4 消費者問題を扱う宮城県内の関係諸団体の意見を十分に反映すること

 

第2 要請の理由

1 はじめに

平成24年12月に消費者教育の推進に関する法律(以下「推進法」)が施行されたことを受け、宮城県においても、宮城県消費生活審議会において推進計画を策定していくことが決定しております。当会としても、推進法の目的を十分に踏まえた計画が策定されることを期待し、平成26年5月16日には消費者庁消費者教育推進会議専門委員である柿野成美氏を講師として学習会を開催する等、推進法及び推進計画に関する研究を行ってきました。そこで、上記学習会や、これまで当会が行ってきた地方消費者行政及び消費者教育に関する要請、活動内容を踏まえ、以下のとおり要請いたします。

 

2 推進法の趣旨及び「消費者市民社会」の普及、啓発について

推進法では、第2条第2項において「消費者市民社会とは、消費者が、個々の消費者の特性及び消費生活の多様性を相互に尊重しつつ、自らの消費生活に関する行動が現在及び将来の世代にわたって内外の社会経済情勢及び地球環境に影響を及ぼし得るものであることを自覚して、公正かつ持続可能な社会の形成に積極的に参画する社会をいう。」と定義し、第3条の基本理念において、「消費者教育は、消費生活に関する知識を習得し、これを適切な行動に結び付けることができる実践的な能力が育まれること」(第1項)、「消費者が・・・消費者市民社会の形成に参画し、その発展に寄与することができるよう、その育成を積極的に支援すること」(第2項)と定めています。

このような「消費者市民社会」の意義やこれに積極的に参画していく消費者の育成は、被害対応を中心に考えられていたこれまでの消費者教育から一歩進んだ、新たな視点を提唱するものです。急速に複雑化し手口も進化していく消費者被害に対し、これを根本的に予防するためには、個別の被害対応・被害予防では足りず、消費生活に関する知識を習得し、適切な行動に結びつけることのできる能力の育成が必要であり、このような消費者教育を定めた推進法はこの点で評価でき、期待できるものです。

しかし、このような「消費者市民社会」、消費者市民教育は、一般市民にはまだ馴染の薄い内容と言えます。

したがって、まずはこの推進法の趣旨や「消費者市民社会」の意義をいかに普及、啓発していくかが重要であり、これを推進計画の重点課題として掲げると共に、その具体的方策を検討し、推進計画の中にも盛り込むべきであると考えます。

但し、消費者市民教育と言っても、これはあくまで消費者被害に遭いにくい消費者、自らの消費行動の社会に対する影響までも考えられる消費者の育成が必要であるという、国及び地方自治体の側の責務であって、消費者の側にそのような消費者となるべき責務を課すものではありません。したがって、消費者市民社会の意義の普及、啓発にあたっては、推進法が、合理的消費者像を前提としたり、消費者の自己責任を問うものではないということを同時に啓発し、誤った理解が広まることのないよう留意すべきであることを併せて要請いたします。

3 イメージマップ等を活用した、①現状分析、②具体的なアクションプランの策定、③推進計画策定後の検証について

効果的な推進計画を策定するためには、まず、宮城県における消費者教育の現状を分析することが不可欠です。そこで、推進計画策定の前提として、消費者庁が作成したイメージマップを参考にしながら、宮城県独自のイメージマップを策定し、宮城県における消費者教育のうちどの領域が不足しているか等を十分に分析すべきであると考えます。その際には、教育の在り方は各自治体により異なることから、消費者庁の方針を参考にしつつも、それに捉われず、宮城県としてはどのような消費者教育を行っていくべきかを議論することが必要です。

また、推進計画を実効性あるものにするため、推進計画の策定にあたっては、抽象的項目やこれまでの消費者教育行政の整理に止まらず、具体的なアクションプランを策定することが重要です。

更に、推進計画の実効性確保のため、推進計画策定後も、アクションプランへの取組状況やその効果を検証、評価していくこと、及びその検証方法について、推進計画にも明記することが重要であると考えます。このためにも前記イメージマップ等は参考になり、また、例えば、静岡県消費者教育推進計画は進捗評価について数値目標を定め明確に推進計画に盛り込んでおり、参考になります。

4 消費者教育等の担い手の育成、学校における消費者教育の充実等について

(1)消費者教育の推進に関する基本的な方針(以下「基本方針」)においては、消費者教育を担う多様な関係者をつなぐためには、間に立って調整をする役割を担うコーディネーターが、消費者市民社会形成の推進役としての重要な役割を果たすと位置づけられています。そのため、消費生活センター等が拠点となって、多様な主体が連携・協働した体制づくりが進むよう、コーディネーターの育成に取り組むこととされ、さらにその対象者については、地域において啓発活動に取り組む消費生活相談員、消費者団体やNPOの一員として活動する者や、社会教育に関する専門的・技術的な助言・指導に当たる社会教育主事が、学校、消費者団体、事業者・事業者団体、大学等と連携するためのコーディネーターの役割を担うことが期待される、とされています。

(2)消費者教育の実践のためには、基本方針にあるとおり、その担い手の育成が重要であり、担い手育成のための具体的方策についても推進計画に盛り込むべきであると考えます。

消費者教育の担い手としては、これまでも消費生活相談に対応し知識、経験の積み重ねのある消費生活相談員が考えられ、相談員へのさらなる研修の充実や、これまでも当会が要請してきた相談員の雇用、地位の安定等が重要です。

また、相談員以外の地域における人材の育成も重要であり、そのための具体的方策としては、例えば、ケアマネージャー、ヘルパー、民生委員等の高齢者・障害者等を支援、見守る立場の者への研修の実施、啓発・情報提供等が考えられます。この分野に関しては、当会としても出張講座等により協力できると考えております。

また、高齢者の見守りネットワーク等、既存のネットワークを活用した研修や啓発を行うことで、効果的・網羅的な消費者教育を行うことができ、これは同時にネットワークの強化にもつながり、消費者被害の予防にも資すると考えられます。

(3)消費者教育の中心的な実践の場となる、学校における消費者教育の充実のための具体的計画を盛り込むことも重要です。

この点、地域との連携を図るとともに学校の教員に対し消費者教育の研修や情報提供等を行うことができるコーディネーターを育成していくことが考えられます。

また、学校における消費者教育を充実させるためには、現場の教師による消費者教育に関する研究会・事例発表会などの取り組みと、消費者行政部門と教育部門(教育委員会)とが連携して消費者教育を実践していくことが重要です。千葉県柏市においては教育委員会と行政部門が連携し、消費者教育の授業計画例を策定したり、消費者教育相談員を設置する等、積極的な施策が行われており参考になります。また、埼玉県では、教育委員会主導の下で現場の教師による消費者教育実践と報告が行われています。

また、当会が実施している出前講座の活用等、外部機関との連携についても盛り込んでいただきたいと考えます。

5 関係諸団体の意見を十分に反映すること

「消費者市民社会」の実現という法の趣旨を普及し、達成していくためには、多様な団体の協力を得ていくこと不可欠であり、そのためには一方的な行政主導ではなく、関係諸団体の意見を十分に反映しながら施策を進めていくことが必要であると考えます。宮城県では、新たに消費者教育推進地域協議会を立ち上げるのではなく、既存の宮城県消費生活審議会を拡充して地域協議会の機能を持たせることとされていますが、そのような方法を採るとしても、多様な団体の意見を十分に反映していくことが重要であり、また将来的には地域協議会を設置することも含め検討されるべきであると考えます。

6 まとめ

推進法の施行により、消費者教育は新たな局面を迎えていると言えますが、当会としても、消費者被害の根本的な予防のために、充実した消費者教育について引き続き検討、研究を行い、講師派遣等の協力可能な分野においては具体的に協力していきたいと考えております。宮城県においては、推進法の趣旨を反映した実効性のある推進計画を策定して頂きたく、以上のとおり要請いたします。

以 上

 

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