国選弁護人報酬の減額に抗議し、増額を求める会長声明
国選弁護人の報酬額は、2000年度から地方裁判所における標準的事件(3開廷)について、8万6400円とされ、その後2年間据え置かれてきていた。ところが、2003年度にはこの国選弁護人の報酬額が、8万5600円に引き下げられ、本年度は、さらに8万5200円に引き下げられるに至った。
いうまでもなく国選弁護制度は、刑事被告人の憲法上の権利である弁護人依頼権を実質的に保障しようとする制度である。そして、現在の刑事弁護の実情は、刑事事件数の増大傾向とともに、国選弁護人が選任される比率も増大しており、実に75パーセントにも及んでいる。わが国の刑事事件は、国選弁護人によって支えられているといっても過言ではない。
国選弁護人の職務内容は、私選弁護人のそれと同じである。しかるに政府は、弁護士会からの度重なる国選弁護人報酬増額の求めにも応じず、極めて低額な報酬にとどめ置いてきた。しかも、記録謄写料、交通費、通信費等の実費については、原則として支給されず、国選弁護人の個人的負担となっている。このような現在の状況は、弁護士の経済的犠牲の下に刑事弁護制度を維持しようとしているものといって過言ではない。
しかも今般の刑事訴訟法の改正により、平成18年12月までには、被疑者段階における国選弁護制度が実施されることになっており、今後も国選弁護制度の適用範囲は増大し、その重要性は増していくことになる。それにもかかわらず、仮に現行の国選弁護人報酬額を基礎に被疑者段階の国選弁護報酬が算定されることになれば、国選弁護人の犠牲と負担はいっそう増大することになる。
被疑者・被告人の弁護人依頼権を実質的に保障するためには、多くの弁護士が国選弁護を担当することが必要である。しかし、適正な報酬の支払いがなされず、これまでどおり経済的犠牲と負担を弁護人に押し付け続けるならば、適正な弁護活動を保障する国選弁護の担い手を確保することが困難となっていくことは必定である。適正な国選弁護人報酬の支払いがなされることは、国選弁護制度が十分に機能するための前提である。
政府は、これまで極めて低額な国選弁護報酬を抜本的に改めようとせず、逆に昨年度に国選弁護報酬の減額を行い、本年度もさらに減額を行おうとしている。
よって、当会は、適正な刑事弁護制度を確立していくためにも、国に対し、国選弁護人報酬の増額等を求め、以下の要望をする。
記
1.国選弁護人報酬の支給基準を、第一審標準基準事件1件あたり金20万円以上とし、そのために必要な予算措置を講ずること。
2.事件の難度(罪質、罪数)、法廷外の準備活動、法廷内の具体的訴訟活動、出廷回数、審理期間など、弁護活動の総体に応じた報酬および日当を支給すること。
3.弁護活動のための記録謄写料、交通費、通信費、通訳料、翻訳料等の実費全額を、本来の報酬に加算して支給すること。
2004年8月26日
仙 台 弁 護 士 会
会 長 鹿 野 哲 義