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労働時間規制の緩和に反対する会長声明

2015年02月05日

1 厚生労働省は、労働政策審議会(労働条件分科会)に対し、本年1月16日、労働時間に関係なく成果に応じて賃金を支払う新制度(以下、「新制度」という。)の導入などを盛り込んだ報告書の骨子案を提示した。新制度の適用対象者は、「職務の範囲が明確で高度な職業能力を有する労働者」とされ、また、対象労働者の具体的な年収額については、労働基準法第14条に基づく告示の内容(1075万円)を参考に、法案成立後、改めて審議会で検討の上、省令で規定するとされている。

2 新制度は、一定金額以上の年収を得る者について時間外労働(残業)という概念自体をなくし、労働者が目標を達成して成果を出すためにいくら長時間労働をしようと、割増賃金を支払わなくてよいとするものである。

報告書骨子案では、「時間ではなく成果で評価される働き方を希望する労働者のニーズに応える」ということが目的とされているが,そのようなニーズが真に存するかは疑問がある。

仮にそのようなニーズがあったとしても、このような新制度が立法化されれば、もし使用者が労働者に対して、通常の労働量では達成不能な無理な成果を求めれば、労働者は、成果を出すために、休日も含めた長時間労働をせざるを得ない。これでは事実上、際限のない長時間労働を命じることや、休日を取らせずに働くことを命じることを許容するに等しい。

なお、報告書骨子案では、健康確保の措置を講じることや、対象者の同意を要件とすることなどもあわせて提案している。しかし、挙げられている健康確保の措置は、時間外労働時間が1か月100時間を超えた労働者に対して医師による面接指導を義務づけるというような不十分なものであり、また、従業員である対象者が同意を拒むことは難しいと考えられることから、これらが長時間労働の歯止めとして機能するとは言い難い。

3 新制度のいう適用対象労働者の範囲についても、「職務が明確で高い能力を有する労働者」という要件はあまりに抽象的であり、およそ対象が限定されていない。これでは使用者の一方的解釈によってあらゆる種類の労働者が対象となるおそれが高く、まったく歯止めにならない。

また、年収要件にしても、ひとたび新制度が立法化されて新しい適用除外制度が導入されれば、爾後なし崩し的に年収要件が引き下げられ、適用対象労働者が拡大していくおそれが強い。現に、日本経団連は、2005年6月21日の「ホワイトカラー・エグゼンプションに関する提言」で対象労働者の年収を400万円と想定している。

4 現在、日本の過労死・過労自殺(過労自死)の労災件数は、戦後最悪の水準を維持したままであり、長時間労働や職場のストレスなどによる精神疾患の労災件数も戦後最高を記録している。このような状況の中で、新制度が導入されれば、ますます長時間労働が広がり、過労死・過労自殺(過労自死)が増加するおそれが強い。新制度は、日本で働く労働者の生命と健康を脅かす極めて危険な内容である

5 以上より、当会は、新制度が提示する労働時間規制の緩和に強く反対する。

 

2015年(平成27年)2月5日

 

                   仙 台 弁 護 士 会

           会長 齋 藤 拓 生

 

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