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少年法の「成人」年齢引下げに反対する会長声明

2015年04月24日

与党自由民主党は,平成27年4月14日,少年法の適用年齢を現行の20歳未満から引き下げることなどについて検討する「成年年齢に関する特命委員会」を開き,この5月中にも少年法改正についての方向性をまとめる考えを示したと報じられている。

上記特命委員会の開催は,選挙権年齢を18歳以上に引き下げる公職選挙法改正案が今国会(第189回通常国会)に提出され,同案の附則で「少年法その他の法令の規定について検討を加え,必要な法制上の措置を講ずるものとする」とされていることに関連した動きである。

しかし,法律の適用年齢を考えるに当たっては,それぞれの法律の立法趣旨に照らして,各法律ごとに個別具体的に慎重に検討すべきである。

少年法は、人格の形成途上にある若年犯罪者への再犯防止対策として,刑罰を科すよりも保護処分に付する方が適切であるとの立法趣旨に基づくものであり,旧少年法(大正14年制定)が「少年」年齢を18歳未満としていたのを,現行少年法(昭和23年制定)がこれを20歳未満に引き上げたのも,この立法趣旨に基づいてなされたものである。

かかる立法趣旨に基づき,家庭裁判所等の関係機関は,人間行動科学に基づく審理と保護処分優先の処遇を実践してきた。刑事裁判及び刑務所での処遇より,少年法に基づく少年審判手続と少年院での処遇の方が,若年者の再犯防止に有効であるということは,法務省等の実証的研究や調査・分析等によって裏付けられている。また,少年犯罪の件数が増加しているとか凶悪化しているとの統計データは存在せず,少年法の適用年齢を引き下げるべき立法事実と一般に言われている事実は存在しない。むしろ,非行を犯した少年の多くは,成長過程において多くのハンディを抱えていることが明確になっており,かかる少年には刑罰を科すことではなく,保護処分に付して個別的な指導・教育を行い,成長を支援することこそが,再犯防止のために必要なことであり,選挙権年齢の引下げに連動して少年法の「成人」年齢をも安易に引下げれば,18歳・19歳の年長少年からそうした家庭裁判所の人間関係諸科学の知識に基づく支援の機会を奪うことになってしまう。

少年法の適用年齢については,その立法趣旨を実証的に検討し,慎重に議論を尽くす必要があり,それをすることなく,ただ単に選挙権年齢の引下げに連動させるなどということがあってはならない。

よって,当会は,少年法の適用年齢を現行から引き下げることに強く反対する。

 

平成27(2015)年4月24日

                           仙 台 弁 護 士 会

                   会長 岩 渕 健 彦

 

 

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