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平成14年6月20日会長声明

2002年06月20日

個人情報保護各法案に反対し、住民基本台帳ネットワークシステム施行の延期を求める仙台弁護士会会長声明 

 6月19日までの今国会の会期が延長された中、政府は、個人情報保護法案及び行政機関個人情報保護法案が成立しない場合であっても、住民基本台帳ネットワークシステム(以下「住基ネットシステム」という)の8月施行を実施したいとしている。

 

 個人情報保護法案は、メディアの活動を不当に規制するのみならず、弁護士、弁護士会を含む民間事業者一般に対し具体的義務を課した上、個人情報保護のための独立した機関をおかずに主務大臣が助言、勧告、命令等の権限を持ち、命令違反には罰則を設けているなど、事業者に対する広範な介入を招くおそれが高い。

 

 また、行政機関個人情報保護法案も、利用目的の変更、目的外利用や行政機関同士の情報提供を広く認める反面、その必要性・相当性についてチェックできる手続的配慮がなく、罰則も一般の守秘義務違反等しかない。 このように、個人情報保護法各法案には、重大な欠陥がある。

 

 昨今の、防衛庁における、職員が情報公開請求者のリストをデータ化して、他部局に流し、発覚するや削除した事件は、情報の収集、目的外利用及び内部の情報提供等について、まさに、上記必要性・相当性によるチェックが全く働かないことを、如実に示している。

 

 もとより高度情報化社会では、個人情報保護法制は必要である。 OECD8原則を受けた、ネットワーク社会の個人情報保護を目的とするEUデータ保護指令は、その要求水準を満たす個人情報保護法制のない第三国へのデータの移転を禁止すらしている。 情報化社会において取り残されないという面からも、上記水準を満たす個人情報保護法制の整備は不可欠であるが、前記個人情報保護各法案は、到底そうした水準を満たすものではない。

 

 翻って言えば、住基ネットシステムは、200を超える行政事務に使用できる共通番号を国民全員に付し、オンラインによりネットワーク化するというものである。

 

 技術的には、個人の付番号をいわばマスターキーにして、当該個人に関するあらゆる情報の集積が可能となるシステムである。 法制の整備を含む十分なセキュリティ措置なしには、取り返しのつかないプライバシー侵害が起きるおそれが大きい。 そこで、1999年の住民基本台帳法改正の際には、附則1条2項で「この法律の施行にあたっては、政府は、個人情報保護に万全を期するため、速やかに、所要の措置を講ずるものとする」と定められた。

 

 しかるに、前記個人情報保護各法案は、上記附則にいう所要の措置を満たすものではない。 ましてや個人情報保護法制の整備を待たずに住基ネットシステムを稼働させるというのは、プライバシー保護の見地からは、暴挙とすら言いうるものである。

 

 以上、当会としては、個人情報保護各法案には前記重大な欠陥を払拭する抜本的修正が必要であり、また、そうした個人情報保護が十分になされるような法整備がなされない限り、住基ネットシステムの施行も延期されるべきである。

 

 

2002年(平成14年)6月20日

仙台弁護士会会長   犬 飼 健 郎

 

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