情報公開条例に関する会長声明
今般、浅野宮城県知事は、宮城県議会9月定例会に「公安委員会」、「警察本部長」などを実施機関に加える旨の宮城県情報公開条例の改正案を提案した。 この改正案の中の、情報を公開しないことができる非開示規定に関し、「犯罪の予防、捜査等に支障が生ずるおそれがある情報」と定める現行規定によっても公開すべきでない捜査情報等は保護できるとする知事の主張に対し、県警側は、行政機関の保有する情報の公開に関する法律(以下「情報公開法」という)の規定と同様「犯罪の予防、捜査等に支障を及ぼすおそれがあると実施機関が認めるにつき、相当の理由がある情報」としないと治安維持に支障が出ると主張し、この論議について社会的な関心が集まっている。
しかしながら、捜査情報等の保護は知事提案にかかる規定でも十分であり、県警が危惧するような状況は考えられず、他方において県警側の主張を採用した場合、非公開処分の濫用のおそれが危惧されることに照らせば、知事提案の規定について敢えて県警が主張するような修正を行うべきではないと考える。
情報公開法案の審議の際も、県警が主張する規定方法をとることについては異論が多く、とりわけ、ときに高度の政治判断が要求され、場面によっては司法判断になじみにくい面があるとされる外交、防衛情報と同じように捜査情報を扱うことには強い批判があった。
捜査機関が逮捕状や捜索差押令状を求める際に裁判官の審査を経なければならないことからも明らかなように、本来、捜査活動は司法判断になじむものであるし、裁判所は捜査活動の適否を監督する機関でもある。判断の専門性・技術性・政治性いずれの点からも他の情報と異なる扱いをする合理的理由はないと言わなければならない。
また、現行規定にあって、公開・非公開の適否が裁判上問題になったときには、真に非公開にすべき捜査情報等について、情報の内容そのものを明らかにすることなく、個々の非公開部分ごとにその種類、性質等及び非公開の理由を説明する文書を捜査機関が提出するといった主張・立証方法(いわゆる「ヴォーン・インデックス方式」と呼ばれる)をとることにより、「捜査等に支障を及ぼすおそれ」があるか否かについて適切な司法判断ができると考えられる。
公開すべきでない捜査情報等を明らかにしないまま「捜査等に支障を及ぼすおそれ」の有無について主張・立証するのは極めて困難であるとの県警の主張は杞憂にすぎない。
県警は現行規定では裁判の場で重要な捜査に関する情報が開示されるおそれがあるため、国や他県から捜査に関する情報が提供されなくなるという危惧を表明しているが、かかる状況は現実には考えにくく、またそのようなことはあってはならない。 むしろ危惧すべきは県警の主張を採用した場合における情報秘匿のおそれである。 警察にあっても度重なる不祥事が相次ぎ、しかも強い身内意識や組織防衛の立場から不祥事が露見してもなおそうした事実の情報公開に消極的であったことが他県等で報告されており、上記秘匿のおそれは決して杞憂ではない。
当会は平成2年の宮城県情報公開条例制定の際にも、情報非公開の聖域を作るべきではなく、公安委員会をも実施機関に含めるべきであるとの意見を表明している。
この表明の根拠である「より開かれた県政、民主的行政を築く」という観点は今回の改正においても最重要視されなければならない。
以上述べてきたとおり捜査情報についても他の情報と異なる扱いをすることなく、真に実効的な情報公開条例とするための改正こそ県民の望んでいるものと言うべきである。