少年法の改正に反対する会長声明
自民、公明、保守の与党三党は、前国会で廃案となった政府案の主要な部分を取り入れた少年法改正案(以下「本法案」という)を本年9月下旬開催の臨時国会に議員立法として上程しようとしている。
上記政府案は、現在の職権主義構造下において、検察官の立会いを認め、観護措置期間を延長することなどを内容とするものであり、少年審判の基本理念である保護育成に反することはもちろん、何ら事実認定の適正化に資することにもならないことは、当会が従来より再三指摘してきたところである。
今回の与党案は、上記のような問題を含んだ政府案に加えて、刑事処分対象年齢を現行の「16歳以上」から「14歳以上」に引き下げ、16歳以上の重大事件については刑事手続に回す「原則逆送」という、少年事件の刑罰化・厳罰化への大転換を盛り込んだものであり、少年法の抜本的改正と言わなければならない。
少年法の理念は、教育的対応を第一義とするものであり、少年の成長・発達を援助するため保護主義を原則としている。
この少年法の基本理念は、社会内での教育的処遇を目指すべきであるとする「子どもの権利条約」等の国際準則にも合致しており、制度的に高い評価を受けているものである。
加えてわが国の統計によれば大半の非行少年が更生し、20代の犯罪率が他の国に例がないほど低下しており、これは現行少年法のもとで保護システムが基本的には有効に機能していることの証左である。
加えてアメリカの例を見ても「刑罰化」「厳罰化」が少年犯罪の抑止につながっておらず、少年の立ち直りにとっても少年法の理念に基づく矯正教育こそが有効であるというべきである。
本法案のような抜本的改正は、少年犯罪の実態と原因の調査や重大な少年事件のケース分析を丁寧に行った上で、少年犯罪の被害者も含めた幅広い人々から十分に意見を徴するなど広範な国民的議論を経て、慎重に行われるべきである。 しかるに今回、与党三党は、国民的議論が熟しているとは到底認められないにもかかわらず、法制審議会の議論すら経ないで拙速に本法案の成立を図っており、手続面においても重大な問題が存する。
よって、当会は、本法案に反対の意思を表明する。