少年法改正法案の審議入りに対する会長声明
本年5月11日、『少年法を一部改正する法案』(以下「本法案」という)は、衆議院本会議において、趣旨説明と質疑が行われ、法務委員会において実質審議が開始されることとなった。
今回の審議入りは「5千万円恐喝事件」や17歳の少年による「主婦刺殺事件」「バスジャック事件」等も契機としているが、これらの少年事件の示していることは、子供の最初のSOSや問題行動を正面から受け止めて対応しきれない家庭、学校、警察、地域社会のあり方の問題や、少年の心の生育の未熟さ・不安定さであって、この法案のような対症療法的な処罰手続の強化によっては同様な事件の防止を期待できるとは考えられない。いま求められていることは、これらの事件の真の原因を探求する中で子供の状況を正確に把握し、子供の成長を真に支援し援助する大人側の連携と協力の態勢づくりである。
本法案により現在の職権主義構造下において、検察官が立会い、観護措置期間が延長され、あるいは多数の監察官に囲まれた中で審判が行われることは、少年審判の基本理念である保護育成に反することはもちろん、何ら事実認定の適正化に資することにもならないことは、当会が従来より再三指摘してきたところである。
よって、当会は、改めて本法案に反対するとともに、国会においては少年非行の真の解決を目指した冷静かつ慎重な審議がなされるよう強く求めるものである。