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「表現の不自由展・その後」の補助金不支給決定に関する会長声明

2019年11月14日

1 2019年8月1日に開幕した国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」(以下「芸術祭」という。)の企画展「表現の不自由展・その後」(以下「不自由展」という。)は,テロ予告や脅迫の電話などがあったことを理由に同月3日から中止されていたが,同年10月8日に再開され,閉幕日の同月14日まで展示が続いた。
  当会は,同年9月19日付け「表現の不自由展・その後」の中止に関する会長声明において,不自由展が暴力的な言動によって中止に追い込まれたことに重大な懸念を表明したが,不自由展が再開しそれが継続されたことは,暴力的な言動に屈せず表現の自由を守ったものとして重要な意義がある。当会は,この間の再開に向けた関係者の努力と決断に敬意を表する。

2 他方,文化庁は,同年9月26日,芸術祭に対して既に採択されていた文化資源活用推進事業の補助金を全額不交付とすると発表した。文化庁は,その理由として,「補助金申請者である愛知県は,来場者を含め展示会場の安全や事業の円滑な運営を脅かすような重大な事実を認識していたにもかかわらず,それらの事実を申告」しなかったことを挙げている。
  しかし,そもそも,上記「重大な事実」が何を指すものか極めて不明確である。また,補助金申請をした愛知県が,申請時(同年5月30日)に,不自由展の展示作品に不快感を持つ人々から抗議を受けることは認識し得ても,展示会場の安全や事業の円滑な運営を脅かすような事実を認識できたかは疑問であり,ましてやテロ予告等の犯罪的行為により中止に追い込まれることまで認識できたかは甚だ疑わしく,上記理由の合理性は認め難い。
また,このような手続的な不備を理由に補助金不交付とすることは,文化庁も認めているように,前例が確認されていない異例なものである。そのような異例の決定であるにもかかわらず,補助金全額不交付決定に至る審査の過程を記録した議事録が作成されておらず,公文書管理法に抵触する。加えて,今回の補助金不交付決定は従前の運用に反して任期中の外部審査員からの意見聴取も行っていなかったことが明らかになっている。このような不透明な手続による決定に客観性は認められない。
したがって,文化庁の上記理由に客観的合理性があるとは認め難い。
むしろ,菅義偉内閣官房長官や柴山昌彦文部科学大臣(当時)が補助金交付決定にあたっては不自由展の展示内容を確認する旨の発言をしていたこと(同年8月2日記者会見)を踏まえれば,補助金全額不交付決定は不自由展の展示内容に対する不快ないし嫌悪感からなされた恣意的な政治的介入であることが強く窺われ,表現の自由(憲法21条)に対する不当な干渉であると言わざるを得ない。

3 展示内容に着目して補助金の全額不交付決定を行うことは,行政権力者が補助金交付に適する表現内容を選別(差別)することを意味する。これを是認してしまえば,今後,補助金が交付される文化事業において,補助金の不交付をおそれて,自由な表現活動を萎縮させてしまう。これは,「文化芸術活動を行う者の自主性が十分に尊重されなければならない。」という文化芸術基本法の基本理念に抵触するものであり,多様な価値観や意見の存在を前提とする民主主義社会の発展を阻害させることになる。
  よって,当会は,文化庁に対して,今回の補助金全額不交付決定を取消し,今後表現の自由や文化芸術基本法の意義を十分に踏まえた対応をとるよう強く求める。

 
2019年(令和元年)11月14日

仙 台 弁 護 士 会

会 長 鎌 田 健 司

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