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東京高検黒川弘務検事長の定年延長を行った閣議決定を直ちに撤回することを求める会長声明

2020年03月12日

検察庁法22条は、「検事総長は、年齢が65年に達した時に、その他の検察官は年齢が63年に達した時に退官する」と定める。東京高等検察庁の黒川弘務検事長は「その他の検察官」にあたり、本年2月7日に退官する予定であった。ところが、安倍内閣は、本年1月31日の閣議で、国家公務員法81条の3第1項の規定を根拠に黒川検事長の定年延長を決定した。
 
国家公務員法81条の3第1項は、任命権者は、定年に達した職員が退職すべきこととなる場合において、「その職員の職務の特殊性又はその職員の職務の遂行上の特別の事情からみてその退職により公務の運営に著しい支障が生ずると認められる十分な理由があるときは」、定年退職予定日の翌日から起算して1年を超えない範囲内で、その職員の定年を延長することができるとしている。                                           
しかしながら、検察官も国家公務員ではあるが、国家公務員の身分や職務に関する一般法である国家公務員法とは別に、検察庁法が特別法として、検察官の定年を定めているのであるから(検察庁法32条の2)、国家公務員法81条の3第1項が検察官に適用される余地はないというべきである。しかも、国家公務員法81条の3が新設された1981年当時の国会審議では、人事院が検察官にはこの規定は適用されないという考え方を示したことを踏まえて同規定を含む法案が可決成立しており、立法者意思は明確に示されていた。条文構造から見ても、国家公務員法81条の3第1項は、「前条第一項の規定により退職すべきこととなる場合において」とし、同法81条の2(定年による退職)を前提にした勤務延長を規定するが、検察官には同法81条の2の適用はない以上、同条を前提とする国家公務員法81条の3の適用も当然にない。
安倍首相は、本年2月13日の衆院本会議で、上記政府見解の存在を認めた上で、安倍内閣として閣議決定で解釈を変更したことを明言した。しかしながら、上記のとおり、国家公務員法81条の3は検察官には適用がないことを前提に国会で審議され制定されたものである。それをときの内閣の都合で国会の審議も経ずに変更することは、国会の立法権を軽視するものであり、三権分立の趣旨に反する。そもそも、検察庁は「検察の理念」として「厳正公平、不偏不党を旨として、公正誠実に職務を行う」ことを掲げている。刑事司法の一翼を担い、強大な捜査・訴追権限を有している検察官の人事のルールは、国政上の最重要事項の一つであり、全国民を代表する国会の審議・決定をも経ずして、単なる閣議決定で決められるべき事柄ではない。ときの政権の都合で、こうした重大事項についても、立法者意思を無視し、従来の法解釈を恣意的に変更してかまわないということでは、法治主義の否定にほかならない。
したがって、黒川検事長の定年延長を認めた閣議決定は、検察庁法22条に違反し、違法である。

なお、念のため付言すると、仮に閣議決定により解釈変更をして検察官にも国家公務員法を適用して定年を延長できると考えたとしても、それが可能な場合は現行法上、きわめて限定されている。国家公務員法81条の3第1項によれば、定年延長には「その退職により公務の運営に著しい支障が生ずると認められる十分な理由」が必要である。そうした理由が認められる場合を人事院は、その規則で限定列挙している(人事院規則11-8第7条)が、 黒川検事長については、同条の列挙する事由のいずれに該当するかについて合理的な説明がなされていない。したがって、黒川検事長の定年延長を認めた閣議決定は、国家公務員法および人事院規則に違反している疑いが極めて強い。任命権者の恣意的判断でこれらに反する定年延長が許されるとなれば、内閣から独立した立場から国家公務員の政治的中立性と計画的人事を支える人事院の機能が没却されかねない。

 今回の定年延長は、明らかに違法であり、検察の政治的中立性を損ないかねず、国民の検察に対する信頼をも失わせるおそれが大きい。
 よって、当会は、政府に対し、黒川検事長の定年延長を行った閣議決定を直ちに撤回することを求める。

2020年(令和2年)3月12日

仙 台 弁 護 士 会

会 長 鎌 田 健 司

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