2017年4月19日,裁判所法の一部を改正する法律(以下「2017年改正裁判所法」という。)が成立し,同年11月1日以降に採用された司法修習生(第71期以降)に対して,基本給付金,住居給付金及び移転給付金を内容とする修習給付金が支給されることとなった(裁判所法第67条の2第1項,第2項)。
この新たな給付金制度による給付金の支給対象は改正裁判所法施行後に採用される司法修習生に限定され,2017年改正裁判所法の「施行前に採用され」た司法修習生については適用しないものとされている(2017年改正裁判所法附則第2項)。
その結果,無給で司法修習を余儀なくされた新第65期から第70期までの司法修習生であった者(以下「谷間世代」という。)約1万1000人に対する不利益取扱が放置されることとなってしまった。
当会は,2018年1月25日付会長声明で,「司法が国の三権の一翼を担うことから,司法制度の担い手の養成については,国が責務を負うものである。しかし,実際には新65期から70期の司法修習生が無給とされ,多くが修習資金の貸与を受けざるを得なかったものであり,国が負うべき責務が十分に果たされたとはいえない。このような,司法修習を受けた時期のみを理由とする不利益取扱いは明らかに不合理なものであって,速やかに是正される必要がある。」として,国及び関係機関に対し,谷間世代に対する救済措置を講じるよう求めた。
また,谷間世代の司法修習生が原告となって提起した「給費制廃止違憲訴訟」に対する名古屋高裁判決(2019年5月30日)は,請求を棄却したものの,付言で「例えば谷間世代の者に対しても一律に何らかの給付をするなどの事後的救済措置を行うことは,立法政策として十分考慮に値するのではないかと感じられる」と述べている。
それにもかかわらず,国及び関係機関による谷間世代に対する救済措置が何ら講じられないまま,現在に至っていることは,極めて遺憾である。
よって,当会は,法曹三者が国民の権利・利益を擁護する司法の担い手であり,これを充分に育成することは国の責務であることに鑑み,谷間世代の問題を風化させないために,改めて,国及び関係機関に対し,一律の給付金制度の創設など谷間世代の不公平・不平等を抜本的に是正するための救済措置を講じるよう求める。
2020年(令和2年)8月27日
仙 台 弁 護 士 会
会 長 十 河 弘