以下は、仙台弁護士会が日本弁護士連合会災害復興委員会の協力を得て作成し、平成23年4月5日から同年5月4日までの間、合計30回、河北新報朝刊に掲載していただいた法律相談Q&Aです。震災を契機に発生した法的トラブルの解決のお役に立てれば幸いです。
なお、仙台弁護士会では、無料の電話相談、面談相談も実施しております。
詳しくはこちらをご覧いただき、お気軽にお問い合わせ下さい。
※質問をクリックすると回答が表示されます。
瓦礫(がれき)といえども他人の所有物と考えられますから、原則として、その所有者が分かる場合にはその承諾を得たうえで撤去すべきであり、承諾を得ることなく勝手に撤去してはいけません。
もっとも、津波で流されてきた瓦礫については、調査してもその所有者が判明しないことが多いと思います。この場合、瓦礫内に価値がある物(貴金属等の経済的価値を有する物だけでなく、位牌、手紙、アルバム等の主観的価値を有する物も含みます。)がある場合には、本来当該物を遺失物として警察に届け出る必要がありますので、最寄りの警察署または交番にご相談下さい。これに対し、明らかにゴミと思われる物については、土地所有者の方で撤去することもやむを得ないと思います。この場合、所有者の承諾を得ることなく、無断で撤去を行ったとしても、損害賠償義務を負う可能性は低いと思いますが、後日トラブルが生じる可能性もありますので、瓦礫の状況を撮影した写真等の証拠を残して置いた方が良いと思います。 次に撤去費用の点ですが、本件では、通常、撤去を行う土地所有者が負担せざるを得ないと思います。ただし、瓦礫の所有者が判明し、その所有者に瓦礫を流出させたことにつき過失が認められるような場合には、瓦礫の所有者に対し撤去費用を請求できる可能性もあります。
この点、自宅の台所・居室等に瓦礫が流入し、日常生活に支障が生じているような場合には、一定の要件を満たせば、申し出により行政が障害物を除去する救助制度もありますし、今後上記制度以外でも公費による撤去が実施される可能性もありますので、事前に市町村とよくご相談されますことをお薦め致します。
権利証は,法律上は「登記済証」といいます。また,法改正によって権利証に代わり登記識別情報通知書が発行されるようになりましたので,権利証ではなくそちらをお持ちの方もいるかもしれません。どちらでも今回の質問での回答に違いはないので,以下では,単に,権利証と言います。
まず,権利証を紛失しただけであなたの権利(土地家屋の所有権等)がなくなるわけではありませんので,その点はご安心ください。
もっとも,紛失した権利証を誰かが悪用して勝手に所有権移転登記をしてしまうことを心配されるかもしれません。
しかし,実際には,登記の申請をする際には,権利証のほか,印鑑証明等も添付しなければなりませんので,権利証を無くしただけで勝手に登記されてしまう可能性は高いとは言えません。
ところが,今回のケースでは,権利証に加え実印と印鑑証明も流されていますので,勝手に登記される可能性はより高いとも言えます。
勝手に登記をされることを予防する方法として「不正登記防止申出制度」というものがあります。不正登記防止申出をすれば,申出から3か月以内に登記の申請がされた場合には,申出者に登記申請がされた旨の通知がされますので,勝手に登記されることを防ぐことができます。有効期間は申出から3か月ですので,不安な場合は再度の申出をするとよいでしょう。
申出は,申出人本人が登記所に行かなければならないのが原則ですが,やむを得ない事情がある場合には,代理人でも申出できます。ですので,すぐに最寄りの登記所にご相談されてください。
また,印鑑証明・実印の悪用を防ぐため,印鑑登録をしてある役所に行って,印鑑登録証と実印の亡失届,印鑑登録の廃止届をしてください。
通帳について-通帳の不正利用を防ぎたい場合には,金融機関に連絡して事情を説明し,払戻しを止めてもらうとよいでしょう。
反対に,当面の生活費等のため払戻しをしたい場合ですが,多くの金融機関では,通帳・印鑑・キャッシュカードがなくても,本人確認ができれば,一定額(10万円までが比較的多いようです。)の払戻しができます。
いずれにせよ,落ち着かれたら通帳等の再発行の手続をしてください。
健康保険証について-まず,健康保険証がなくても,医療機関に氏名,生年月日等を伝えれば受診できます。
また,次の場合には,医療機関で窓口負担を支払う必要はありません。
(1)災害救助法が適用されている被災地域の住民であり,
(2)①住家の全半壊、全半焼又はこれに準ずる被災にあわれた方,②主たる生計維持者が死亡され又は重篤な傷病を負われた方,③主たる生計維持者の行方が不明である方,④主たる生計維持者が業務を廃止し又は休止された方,⑤主たる生計維持者が失職し現在収入がない方,⑥福島第一・第二原発の事故に伴い内閣総理大臣の指示により避難又は屋内に退避されている方。
今回の地震では,かなり広範囲の市町村に災害救助法の適用がなされていますので,先ほどの(2)①~⑥のいずれかに該当すれば,多くの場合窓口負担を支払う必要がなくなると思われます。医療機関にきちんと申出をするようにしましょう。
ただし,あなたが医療機関で支払を免れた窓口負担は,健保組合等が代わりに払っていますので,健保組合等からあなたに対し,代わりに払った窓口負担分を徴収することが理論上はありえますが,基本的にこれも免除の方向となるようです。
借家契約は、建物が「滅失」すれば終了するのが原則です(罹災都市借地借家臨時処理法の適用があれば異なりますが、今のところ今回の被災地に同法の適用はなされていません)。
「滅失」したと認めた裁判例は、罹災のままの状態では風雨をしのぐべくもない状況で倒壊の危険さえも考えられ、また完全に修復するには多額の費用を要し全部を新築する方がより経済的であるなどの事情から、建物は滅失したものとしました。ご質問では修理をすれば住める程度のようですので「滅失」には至っておらず借家契約は終了していないと一応はいえそうです。
そうしますと、貸主から借家契約を解約できるかという問題になります。借家契約の期間がまだ到来していない場合は、貸主からの解約はできませんから、修繕が可能であれば、貸主に修繕を要求できます。修繕が「可能」とは物理的・技術的に可能というだけでなく経済的可能性も含むと考えられていますので、修繕にあまりに過大な費用を要する場合は修繕請求できない場合もあります。
次に当初決めた借家契約の期間を経過して自然に更新しているような期間の定めのない借家契約となっている場合は、貸主は契約の解約を申し出ることができますが、解約申し入れに正当な事由がないと解約はできません。
貸主が「倒壊の恐れがある」というだけで正当事由があるということにはならず、建物の損壊の程度、修繕にかかる費用、修繕によって延びる耐用年数、立退きによって生じる借主の不利益の程度、家賃の額、立退料の支払の有無や額、等々の諸事情を考慮して解約に正当事由があるか否かが決められます。以上を前提に貸主とよく話し合って下さい。
まず、賃貸人である大家さんは、借主に対して、賃貸物であるアパートの使用・収益に必要な修繕(修理)をする義務を負っています。
但し、賃貸人の修繕義務はどのような破損に対しても発生するのではなく、当該破損の修繕が必要で修繕しなければアパートとしての使用ができない状態にある場合、かつそのような修繕が物理的・経済的に可能である場合に限られます。例えば、破損によっても日常生活に何等支障がない、そもそも全壊して建替えが必要な状態にまでなっている、近隣相場に比べて著しく賃料が低く設定されている上に修繕に過大な費用がかかる等の場合には賃貸人の修繕義務は発生しません。
今回の場合、地震によってどの程度アパートが破損したのか明らかではありませんが、柱や屋根、壁などの主要な構造部分が破損している場合には、大家さんに修理するよう請求でき、借主のあなたに修理する義務はないといえます。
次に、大家さんがいつまで経っても必要かつ可能な修繕を全くしてくれない場合、借主であるあなたは、アパートを使用できない割合に応じて賃料の全部又は一部の支払を拒むことができます。そもそも、賃貸借契約締結時に決められた賃料は、普通に使用できることを前提に決められたものだからです。
なお、賃貸借契約締結時に、借主が全ての修繕を行うという特約を合意している場合があります。このような特約も一定の範囲では有効とされていますが、大地震のような大災害による被害に対しては、特約があっても借主は修繕義務を負わないと考えられています。
賃貸人が賃貸物の保存に必要な行為をしようとするときは、賃借人は、これを拒むことができないと規定されています。
したがって、賃貸物のアパートの所有者である家主(賃貸人)は、賃借人である入居者に対して、修理に必要な期間に限って、当該アパートから退去するよう請求することができます。
但し、この場合の退去は、修理に必要な期間に限られた一時的なもので、退去によっても賃貸借契約が終了するものではありませんから、修理が完了したら入居者が再度入居することを拒むことはできません。
次に、アパートの賃貸借契約において、賃借人は、賃貸目的物であるアパートの使用の対価として賃料を支払っています。
したがって、賃貸借契約そのものが入居者の一時的な退去によって終了するものではないものの、修理のために入居者がアパートの使用をできない以上、家主は、一時退去の期間に相当する賃料を入居者に請求することはできません。
なお、賃貸目的物の修理等の保存行為は、賃貸人の義務であると同時に、賃貸人の権利でもあります。そのため、前述のとおり、入居者は家主からの修繕のための一時的な退去を拒むことはできず、引越費用や仮住まいを借りるための賃料等の費用を損害として請求されても、家主にこの損害を賠償する義務はありません。また、このような危険な状態にも関わらず一時退去を拒否する入居者に対しては、賃貸借契約そのものを解除することができる場合もあります。
まず、自動車は不動産と違って移動することを前提としていますので、現在の現実の所在場所を教えてくれるような制度はありません。自力で見つけるか、偶然発見した方等に知らせてもらう以外ありません。但し、地方自治体によっては、公道上の被災自動車を特定の場所に集めて引渡しを行ってくれるところもあります。
次に、自動車(軽自動車の場合もほぼ同じ)を廃車する場合、ナンバープレート・車検証・印鑑証明書・実印といった書類が必要になります。但し、津波等の天災でそもそも自動車が見つからない場合も多く、各地方運輸局や軽自動車協会等においては、特例としてこれらの書類がなくても、本人確認の上、廃車手続きを進めてくれるところもあります。なお、自動車のローンが残っている場合については、通常当該自動車の所有者は他にいますので、その所有者の同意なしに廃車することはできません。
最後に自動車税や軽自動車税は、毎年4月1日時点の所有者(売主の所有権が留保されている場合は買主)に賦課されます。そのため、4月1日までに廃車手続きを行っていないと原則として課税されてしまいます。但し、地震や津波等の天災によって自動車税・軽自動車税を納付することが困難な場合、所有者からの申請や各地方自治体の判断によって、納付期限の猶予や減額・免除を受けることができます。現実に自動車税・軽自動車税の納付猶予や減免を決めている地方自治体もあります。以上について、その取り扱いが異なることが多々ありますので詳しくは各都道府県や市町村にお問い合わせください。
ご加入の自動車保険に地震や津波による損害を補償する特約が付帯されていない限り、地震及び津波によって被った車の損害は補償されません。特約の有無は保険証券をご覧頂くか、ご加入の保険会社に直接問い合わせて、ご確認頂くと良いと思います。
次に自動車保険料ですが、保険料の支払を免れるためには、自動車保険の解約が必要です。解約を行えば、解約後の保険料の支払は必要なくなります(ただし、自動車保険の解約によって、保険料の支払を免れると同時に、同保険に付帯している他車運転特約や人身傷害補償特約等も失効しますので、ご注意下さい。)。この点、保険会社の中には、解約の申し出があれば、保険契約者に有利となるよう、保険料の支払に関し、津波の被害に遭った日、即ち「罹災日」に遡って解約扱いとする会社もあるようですので、ご加入の保険会社にお問い合せ頂くと良いと思います。
なお、保険料を一括で前払いしている場合には、解約によって、保険料の一部(既払いの保険料から既経過期間に相当する分を控除した残額)が返還されることになります。
最後に「中断証明書」ですが、同証明書は自動車保険が解約または満期で終了した場合において、将来自動車保険に加入する際に従前の等級の継承を認める趣旨で保険会社が発行する証明書のことです。将来自動車保険に再加入する可能性がある場合には、解約時に保険会社から「中断証明書」の交付を受けておくことをお薦めします。なお、発行手続等の詳細はご加入の保険会社にご確認下さい。
結論から言いますと自動車整備工場に対し損害賠償を請求することはできません。
自動車整備工場は車検整備をした上で車をあなたに引き渡すという契約上の義務を負っています。しかし、津波によって工場もろとも預かっていた車が流されてしまったことについて,自動車整備工場に故意・過失はありませんから、車を引き渡せなくなったことの責任はないため、損害賠償義務を負わないのです。
一方で,あなたが車検整備費用を支払う義務もありません。車検整備を依頼する契約は民法上の請負契約にあたるのですが,その目的である車検整備をした上で車をあなたに引き渡すという工場側の義務が消滅する反面,車検費用を支払うというあなたの義務も消滅するからです。
なお,流されてしまった車についてですが,放っておくのはよくありません。車が流されてしまっても,その登録が自動的に抹消されるわけではありませんから,陸運局に廃車の手続きをしないと自動車税がかかってきます。廃車手続きをすれば,支払済みの自動車税が一部還付される場合もあります。今回の大震災で流された車については,簡易な廃車手続きができますので,陸運局に相談して下さい。
また,廃車手続きとともに,任意保険の還付を受けられる場合もありますから,保険会社に確認してみて下さい。
まず前提として「罹災証明(りさいしょうめい)」とは、地震や火災、水害などで被災したことを公に証明するもので、各種援助の申請などに必要となる重要なものです。
罹災証明の発行にあたっては,被災した住家の被害程度の認定(被害認定)がなされ,この内容に応じて,各種制度の支援内容などが決定されます。
具体的には、被災者生活再建支援法に基づく支援金の支払額、各種義援金の配分額、住宅の応急修理制度の利用の可否、仮設住宅や公営住宅への入居についての優先順位、固定資産税の減免措置、無利子奨学金の受給の可否などに影響がでます。
被害認定は,原則として、研修を受けた調査員が、二人以上のグループで被災した住宅に赴き、住宅の傾斜や屋根、壁等の損傷状態を調査する方法で行われます。
そして、被害の程度に応じて、「全壊」、「大規模半壊」、「半壊」、「一部損壊」などの認定がなされます。
もっとも、東日本大震災では、被災の程度が甚大であり、個別の調査になじまないという判断から、航空写真の分析等によって、一部地域については一括して「全壊」と認定する運用もなされているようです。
この被害認定の内容に不服がある場合には、再調査をするよう申立をすることができます。ただし,その場合、被災者からの訴えの内容が精査されること、初回調査未了の地域がある場合はそちらが優先される可能性があることなどから、再調査までは時間がかかる場合があります。
罹災証明の申請方法や不服申立の方法、さらには、各種公的援助の内容などについては、市区町村の窓口ないし弁護士等の専門家に相談してください。
「これは,自然災害などにより発生した被害の程度を,市町村長等が証明するものです」
―震災によって住居が壊れてしまった場合,被害の程度はどのように分けられるのですか。
「地震による建物の損壊の場合,①全壊,②大規模半壊,③半壊,④一部損壊の4つに分けられます」
―罹災証明は,どのような場面で必要となってくるのですか。
「被災者生活再建支援 法などに基づく各種支援施策,義援金の分配,損保会社等への保険金請求,住宅金融支援機構等からの低金利融資,税金や学費の減免,企業内の見舞金を受ける場合等,様々な場面で必要となります」
―罹災証明の申請はどこにすればよいのですか。
「地震による建物の損壊の場合,①全壊,②大規模半壊,③半壊,④一部損壊の4つに分けられます」
―震災によって住居が壊れてしまった場合,被害の程度はどのように分けられるのですか。
「市役所(区役所),町村役場などです。ちなみに,既に修理してしまった後ですと,市町村が被害程度の証明をできない場合がありますので,修理の前に写真を撮るなどしておいたほうがよいでしょう」
―被害を受けた住居に,「危険」「要注意」「調査済」などと書いてある色紙が貼られることがあるようですが,これは,罹災証明とは違うのですか。
「違います。この貼り紙は,被災建築物応急危険度判定にもとづく表示です。これは,余震等による二次災害を防止するために,役所が建物を調査し,二次災害の危険度を判定したうえで建物に貼るもので,罹災証明とは別物です。建物自体の損壊は殆ど無くても,隣家が余震で倒れ込んできそうな場合には,「危険」の赤紙が貼られることもあります。「危険」の赤紙が貼られているからといって,罹災証明が受けられる建物とは限らない場合もあり,全く別物なのです。混同しないようにご注意ください」
地震や津波などの自然災害により、住宅に被害が生じた場合、被災者生活支援法により、最高300万円の支援金が支給されます。
この度の東北地方太平洋沖地震では、東北では青森県、岩手県、宮城県福島県などで被災者生活再建支援法が適用されており、各県内での地震や津波などによる住宅被害に支援金が支給されることになります。
支援金には、
1 住宅の被害の程度に応じて支給される「基礎支援金」
2 住宅の再建方法に応じて支給される「加算支援金」
があります。
まず、1の基礎支援金は、①住宅が全壊した世帯、②住宅が半壊、又は住宅の敷地に被害が生じ、その住宅をやむを得ず解体した世帯、③災害による危険な状態が継続し、住宅に居住不能な状態が長期間継続している世帯、④住宅が半壊し、大規模な補修を行わなければ居住することが困難な世帯(大規模半壊世帯)について支給されます。支給額は、①~③の場合は100万円、④の場合は50万円です。
次に、2の加算支援金は、①住宅を建設・購入した場合、②住宅を補修した場合、③住宅を賃借した場合(公営住宅を除く)に支給されます。支給額は、①の場合が200万円、②の場合が100万円、③の場合が50万円です。
例えば、住宅が全壊したため新たに住宅を建設した場合には、基礎支援金100万円、加算支援金200万円の合計300万円が支給されます。
なお、世帯人数が1人の場合は、基礎支援金、加算支援金のいずれについても、支給額が4分の3となります。先ほどの例だと、基礎支援金75万円、加算支援金150万円、合計225万円となります。
支給申請の窓口は市町村で、申請には罹災証明書等が必要となります。
申請期間は、原則として、災害のあった日から、基礎支援金が13ヶ月間、加算支援金が37ヶ月間です。
被災者生活再建支援法では、「居住する住宅」に全壊や大規模半壊などの被害が生じた場合に支援金が支給されると定められており、被害を受けた住宅を所有していることは要件となっていません。自宅が借家であっても、その他の支給要件を充たせば支援金が支給されることになります。反対に、家を所有していても居住していなければ、支援金は支給されません。
今回のケースでは、「居住する住宅」が「全壊」したのですから基礎支援金として100万円が支給されることになります。また、住宅を「賃借」したので、加算支援金として50万円が支給されることになります。
次に、加算支援金の対象である住宅の建設や賃借については、その建設ないし賃借する住宅の所在地が、前と同じ市町村・都道府県内である必要はありません。被災地である必要もありません。
したがって、被災地でない別の県内にある家を借りることにした今回のケースでも先ほどの加算支援金は支給されます。また、今回のケースとは離れますが、例えば、持ち家が全壊した場合に別の敷地に建物を建設しても加算支援金は支給されます。
ただし、支援金の申請窓口は、基本的に被災時に居住していた都道府県の市区町村となります。
ところで、被災者生活再建支援法の支援金は、世帯ごとに支給されるものです。申請は世帯主がします。
支援金は、個人ではなく世帯に対して支給されることからかもしれませんが、相続の対象にはならないと言われています。したがって、単身世帯で支給前に亡くなられた場合には、相続人に支給されるということにはなりません。
火災保険に地震保険が付保されていれば建物について5000万円、生活用動産について1000万円を上限として地震保険金が支払われます。地震保険とは地震もしくは噴火またはこれによる津波を直接または間接の原因とする火災、損壊、埋没、流失によって居住用建物及び生活用動産について損害が生じた場合に、保険金を支払う保険です。
地震保険の対象は「居住の用に供する建物」と「生活用動産」に限定されています。工場や事務所専用の建物などは居住の用に供する建物ではないことから地震保険の対象となりません。
「生活用動産」(いわゆる家財)は、生活の用に供する家具、什器、衣服その他の生活に通常必要な動産で、1個または1組の価額が30万円を超える貴石や美術工芸品などは含まれません。
地震保険による保険金の支払を受けようとする場合には、地震保険を締結した損害保険会社の最寄りの支店や営業所に連絡して損害認定を受ける必要がありますが、今回のように津波により街ごと流失したような場合には被保険者の立会の必要のない迅速な損害認定がなされることもあると思われます。
加入している火災保険が地震保険を付保していない場合には保険金は支払われません。地震保険を付保していない場合でも地震による火災で半焼以上焼失した場合には保険金額の5%(上限300万円)を限度として地震火災費用保険金が支払われる場合がありますが、今回の場合は津波で建物が流失した場合ですから地震火災費用保険金は支払われません。なお、農協の共済については過去の噴火災害などで相当額の見舞金を支給した例もあるようですから契約先にご確認ください。
保険証券を紛失し地震保険の加入の有無や地震保険の契約をした保険会社がわからない場合には日本損害保険協会(0120-501331)にお問い合わせ下さい。
保険会社は、加入者の方から被害の連絡を受けると、損害の認定調査を実施します。地震保険の場合、「全損」「半損」「一部損」という3つの区分に従って損害の程度を認定します。
今回の震災被害の場合には、津波等の被害が大きかった一定の区域が特別に「全損地域」と認定され、その地域の建物はすべて「全損」と認定してもらえます。
また、木造建物や家財の「一部損」については、自己申告(書面調査)で認定される扱いもなされています(この場合、保険代理店のサポートも依頼できるようです。)。
それ以外の場合は、実際に立会い調査が必要となります。地震保険の場合、調査を迅速・的確・公平に行うために、損害保険協会が統一的な「損害査定指針」を定めており、損害の認定は「損害査定基準」に基づいて実施されることになっています。
たとえば木造建物では、原則として、柱、基礎、屋根および外壁の被害程度で認定をします。被害の程度によっては、内壁の損傷も考慮することがあります。また、床上浸水等の基準による認定もあります(従来は、「一部損」扱いだったようですが、「半損」と取扱いが変更されたようです。)。
実際に支払われる保険金は、契約金額(「保険金額」といいます。)を基準に、「全損」ならその一〇〇%、「半損」ならその五〇%、「一部損」ならその五%となります。ただし、それぞれ、時価(「保険価額」と言います。)の各%を限度とします。もっとも、地震保険の契約金額は、同時に加入している火災保険の契約金額の三〇%~五〇%の枠に抑えられていますので、適切な契約金額を定めている限り、時価がいくらなのかは通常は問題になることはないでしょう。
建物の倒壊・損壊について損害賠償を請求するには、原則として、建売や中古住宅の場合には売主に対して行うこととなり、注文住宅の場合には建築業者に対して行うことになります。
もっとも、地震による建物の倒壊・損壊について、土地の造成上の問題や建物の耐震性の欠陥を証明することは必ずしも容易ではありません。
過去の裁判例によると、宅地については、震度5の地震に耐えられるだけの安全性があればよいと判断したものがありますが、震度6程度であっても、その地域における建築当時の耐震性の社会的要請などを加味することによって、賠償が認められるケースも出てくるでしょう。
他方、阪神淡路大震災のときには、震度7で倒壊した建物について、設計施工の欠陥を理由に、不可抗力による減額を認めたうえで、賠償を命じた裁判例もあります。
このように、あくまでも個別具体的なケースごとに判断されることになると思われますが、一般論で言えば、震度7以上の地域での賠償請求は難しく、震度5以下の地域での賠償請求は、建物の構造や建築時期にもよりますが、認められる可能性はあるものと考えられます。震度6の地域はボーダーラインでしょう。
具体的に賠償請求するにあたっては、資料(設計図や契約書、建築確認申請書等)の収集及び現場保存の方法、さらには、建築士による予備調査の要否など、事前準備に専門的な知識が必要です。
また、裁判だけでなく、建設工事紛争審査会や弁護士会の仲裁センターなどを紛争解決の場として利用することも考えられますので、どのような手続で進めていくのかという点も含めて、早めに弁護士や建築士などに相談することをお薦めします。
分譲マンションのような区分所有建物が震災によって損傷した場合の修繕については、その損傷の程度(損壊か滅失)・場所(専有部分か共用部分)によって、手続や費用負担が異なってきます。
なお、滅失とは、建物の全部又は一部が確定的に効用を喪失している状態で、損壊とは、滅失に至らない程度の損傷をいいます。この区別は修繕費用の金額によるのではありません。 まず、ご質問の場合、水道管などのパイプの破損ということですので、上記損傷の程度の区分によりますと、損壊に該当すると考えられます。
次に、上記損傷が生じた場所ですが、居室内等の専有部分で生じた場合、その修繕は各戸の所有者(区分所有者。居住者が賃借人の場合は賃貸人となる)において、その費用負担で行わなければなりません。
上記損傷が共用部分で発生した場合、その修繕は共用部分の管理の問題となります。したがって、規約に別段の定めがない限り、管理組合による一般管理事項として、総会(集会)の普通決議によって、修繕の方法や予算等を決議することになります。修繕にかかった費用は、規約に別段の定めがない限り、共用部分の割合(専有部分の床面積の割合で決める)に従って、全ての区分所有者が負担することになります。
なお、集会での普通決議の要件は、規約に別段の定めがない限り、区分所有者の過半数(頭数)かつ議決権(専有部分の床面積の割合)の過半数の賛成が得られれば可決となります。この場合、決議に反対しても賛成多数で可決されてしまった場合、決議に従って修繕費用を負担しなければなりませんので、集会では修繕の方法などについて慎重に議論を進める必要があります。
ご質問のマンションの損傷の度合いがどの程度か不明ですが、住めるような状態ではないということですから、大規模滅失(建物の価格の2分の1を超える滅失)又は全部滅失(1棟のマンション全体が建物といえない状態になったこと)に該当すると考えられます。
まず、大規模滅失の場合、総会(集会)を開き、各マンションの所有者(区分所有者の頭数)の5分の4及び議決権(専有部分の床面積の割合)の5分の4以上の賛成を得ることができれば建替決議は成立します。この決議に際しては、再建建物の設計概要、旧建物取壊・再建建物建築費用の概算額、これら費用の分担、再建建物の帰属についても決めなければなりません。建替えには区分所有者に多額の負担をかけることになり、経済的にこのような負担に応じられない者もいます。その場合、建替えに参加する区分所有者(決議に賛成した者等全員)は、建替えに参加しない区分所有者(決議に欠席・反対した者で後に参加の意思表示をしていない者全員)に対して、各マンションを時価で売り渡すよう請求できます。
次に、全部滅失の場合、もはや建物とはいえず、区分所有法の適用はないので、民法の共有の原則に戻ります。そのため、建替えを行うには、敷地共有者全員の同意を得なければなりません。但し、大規模な震災による全部滅失の場合は、敷地共有持分の価格の割合の5分の4の多数決によって建替えを決議することができます。
解雇が認められるかどうかはケースバイケースです。
契約期間の定めのない正社員の場合、判例では整理解雇するには次の4つの要件が必要としています。①人員削減の必要性。②人員削減以外の方法がないかどうか。③十分な協議をしたかどうか。④人選の合理性です。
建物や設備が崩壊し廃業せざるをえない場合は解雇が認められることが多いでしょうが、売上減や経営悪化の解決策として人員削減を安易に行うことは認められません。配転や一時休業などほかの方法では乗り切れないかどうかや、合理的で公正な人選が行われることが求められ、解雇が認められない場合もあります。
契約社員の場合は中途解約するためには「やむを得ない事由」が必要ですから、より高い必要性や合理性が求められます。また契約期間満了の際の打ち切り(雇い止め)も契約更新を何回も行っている場合は正社員と同様に実質的な解雇としてどうしても解雇しないといけない必要性があるかどうかなど理由と手続をふむことが必要です。
退職金については,規程で決まった退職金を支払うことは使用者の義務です。震災で雇主が被害を受けたり廃業する場合でも支払わないことは認められません。
使用者が倒産状態で支払う資金がない場合でも退職金や未払賃金の支払義務はなくなりませんし、会社が破産など法的整理手続きをした場合も優先して支払われます。雇主が倒産状態で資金がない場合は労働者健康福祉機構が行っている立替払制度が受けられます。
いずれの場合も労働基準監督署や弁護士会の相談を受けて下さい。
自宅待機といっても自宅でいつでも出勤できるよう「待機」を命じる場合「休業」ではありませんので通常に給料が支払われます。日給月給制でも完全月給制でも給料は全額支払われます。計画停電のため通勤困難な遠隔地の社員に自宅待機を命じているケースが報道されていますが給料は全額払うケースが多いようです。
休業(働く義務がない)を命じる場合はその原因によって変わります。
震災で建物や施設が破壊され事業が不可能となった場合は、使用者に責任がある休業とはいえないので給料も休業手当も受けられません。特例処置として退職しなくても雇用保険の失業給付が受けられますのでハローワークに相談してください。
建物や施設には被害はないが配送困難や注文の減少のため休業を命ずる場合は原則としては休業手当(平均賃金の6割以上)の支払義務があります。雇主は雇用調整助成金等の助成金を受けられます。これもハローワークに相談してください。
計画停電による休業の場合は、直接の停電時間分は使用者に責任のない休業として休業手当の支払義務がありませんが、非効率なので停電予定日の全日休業を命じる場合は、直接の停電時間以外の時間は休業手当の支払義務があります。
自宅待機中のアルバイトについて、休業中は働く義務がないのですから本来は自由にアルバイトができるはずです。
しかし、実際には就業規則で兼職禁止を定めている場合が多いのでアルバイトが就業規則違反になる可能性があります。特にライバル会社で働く場合は問題があります。アルバイトしたいがいいかと雇主に尋ねられた方がいいでしょう。雇主は弊害がない場合は認めるべきで、認めない場合は権利濫用とされます。
労災保険給付を受けるためには、「業務災害」、即ち業務上の負傷、疾病、障害又は死亡であることが必要です。
この点、厚生労働省は今回の大震災に関して「業務災害」の解釈を示しており、それによれば、「仕事中に地震や津波に遭遇してケガ(死亡)をした場合」や「仕事中に津波があり、避避している最中にケガ(死亡)をした場合」なども、通常「業務災害」に該当するとされています。
従って、今回のケースも「業務災害」として労災保険給付を受けられる可能性が高く、労働基準監督署に対し労災保険給付の請求をされますようお薦め致します。
なお、工場が倒壊しているため、労災保険給付の請求に必要な事業主の証明や必要書類を用意できない場合もあるかと思いますが、その場合でも、今回の大震災を受けて他の資料での代替を認めるなどの運用をしているようですので、労働局や労働基準監督署にご相談されると良いと思います。
次に、労災保険給付の内容ですが、今回のケースの場合、「療養補償給付」や「休業補償給付」などが考えられます。このうち、「療養補償給付」とは労災(指定)病院などにおいて業務上の負傷に対して必要な治療を無料で受けられるという内容の給付であり、「休業補償給付」とは業務上の負傷により4日以上休業し、賃金を受けられない場合に、その休業期間中(但し、休業4日目以降)の賃金の一部(休業特別支給金とあわせて通常は給付基礎日額の8割)を補償するという内容の給付です。上記各給付以外でも、治療後において障害が残存した場合にその障害の程度に応じて支給される「障害補償給付」などもありますので、労災保険給付の詳細につきましては、労働基準監督署にてご確認下さい。
自宅建物や車庫、外壁等の土地上の工作物の所有者は、その設置・保存に瑕疵(欠陥・不具合)があることによって他人に損害を与えた場合、その損害を賠償しなければなりません。
この設置・保存に瑕疵がある場合とは、構造上欠陥がある場合や全く管理されずに放置されて荒れ果てている場合等を指します。例えば、手抜き工事によって建築基準法上必要とされる基準を満たしていない場合、外壁が老朽化して修繕が必要な状態になっているにもかかわらず放置されていた場合などが該当します(手抜き工事が原因の場合、所有者が被害者に損害賠償し、手抜き工事を行った業者に求償していくことになります)。
また、設置・保存に瑕疵が存在する以上、工作物の所有者は、自然災害の発生に伴って当該工作物が倒壊するなどして他人に損害を与えた場合でも、原則として不可抗力を理由にその責任を免れることはできません。但し、震度6以上の大地震等そもそも設置・保存に瑕疵が存在しなくても倒壊してしまうような予測不可能な大災害が発生した場合には、所有者は損害賠償責任を免れるという考えも有力です。
ご質問の場合、自宅の屋根瓦の設置に問題がなかったか、老朽化によって修繕や取替えの必要が生じていなかったか明らかではありませんが、そのような問題があれば(修繕等の管理を全て業者に任せていたとしても)、自宅所有者としての損害賠償責任を負うことになります。
しかし、仮にそのような設置・保存上の問題があったとしても、震度6を超えるような予測不可能な大地震によって瓦が落ちてしまったのであれば、自宅所有者としての損害賠償責任が否定される可能性もあります。
まず、一般的には自宅敷地内のブロック塀が隣家の敷地内に倒れた場合、当該ブロック塀の所有者は,撤去を求められれば応じざるを得ないとされています。また、その際の撤去費用はブロック塀の所有者の負担とされています。これは、相手方に自己の所有物が原因で妨害状態を生じさせている以上、その状態を改善するための費用を所有者として当然に負担しなければならないと解釈されているためです。
しかし,妨害状態が不可抗力によって生じた場合については必ずしも定説があるとはいえず,ブロック塀の所有者だけでなく被害を受けた隣地の所有者にも負担が求められた裁判例や,むしろ隣地の所有者に負担させるとも読める判例もあります。
なお、そもそもブロック塀の設置工事を施工した業者が手抜き工事をしていたといった事情があれば、支払った費用を当該業者に支払うよう求めることができます。
次に、隣人が隣地の所有者である場合、あなたは,隣人に対し境界線上に境界標となる塀を設置するよう求めることはできます(隣人が設置を拒否したら訴訟を起こして設置を求めることができると解釈されています)、その際の設置費用はそれぞれ折半して負担すると定められています。
実際には、境界標となる塀の材質や高さ、幅など具体的な内容を確定しなければなりませんので、隣人と協議して決めることになりますが、その協議すらできない場合は、裁判所での民事調停手続や訴訟手続によって決めていくことになります。
但し、この境界標となる塀のことで訴訟にまで発展してしまいますと、土地の境界は確立されても、隣人との人間関係は著しく悪化してしまうかもしれません。
境界には厳密にいうと公法上の境界(登記された一筆の土地の範囲を示すもの)と私法上の境界(所有権の範囲を示すもの)とがあります。公法上の境界と私法上の境界は一致することが多いのですが、概念上は別です。
私法上の境界について争いが生じた場合、隣地の所有者と立会のうえ境界杭などを確認していきますが、話し合いで解決できなかった場合には、簡易裁判所に「所有権の範囲を確認する」調停を申し立てます。調停においては法務局に保存されている17条地図、旧公図、分筆図、地積図などの資料にもとづいて話し合いが行われます。市役所に保存されている建築確認図面も境界の確認に役立つ場合もあります。調停での話し合いでも解決できない場合は地方裁判所に訴訟を提起します。
調停手続でも訴訟手続でも土地の現況を正確に把握するために双方立会いのもとで測量を行うことが必要になりますが、測量費用は通常数十万円かかりますので境界確認の調停を申し立てる場合や訴訟を提起する場合には相当の出費を覚悟しておく必要があります。
なお、平成17年に「筆界特定制度」ができました。この制度は土地家屋調査士などの専門家から選任された調査委員の調査や意見により簡易迅速に公法上の境界を特定する手続で、これによって私法上の境界を確認することも期待できますので、この制度を利用することも検討してみてください。
今回の大震災では、地震で土地がゆがんでしまったり、土地が数メートルも移動してしまったところもあります。このように地震前と土地の形状が変わってしまった場合の境界確定は困難であり、確定した判断基準があるわけではありません。さきに説明しましたとおり境界争いの調停や訴訟には多額の測量費用がかかることなども考えますと双方が今後土地を利用しやすいように新たな境界を合意したり土地を買い取ったりすることなどもひとつの解決方法です。
これに対して、公法上の境界は私人間で勝手に取り決めることはできず、境界確定訴訟を提起して裁判所に境界を確定してもらう必要があります。
まず、お亡くなりになった方(被相続人といいます)が、遺言書を作成されていた場合には、原則として、その遺言書の内容にしたがって、相続関係が発生することになります。
なお、遺言により、被相続人の配偶者や子供達が相続財産を取得することができない場合でも、遺留分(いりゅうぶん)という権利を行使することにより、一定の財産を取得できる可能性があります。
遺言書がない場合には、民法の規定にしたがって相続人が決定されます。
①まず、被相続人の配偶者(妻または夫)は常に相続人となります。
離婚した配偶者や、内縁関係の夫もしくは妻には、相続人としての地位はありません。
②次に、被相続人の子供(養子を含む)は、配偶者とともに相続人となります。被相続人死亡時に胎児であった子供も生まれてきた場合には、相続人となります。他方、婚姻外で出生した子供については、認知されていれば、相続人となります(相続分は実子の2分の1)。被相続人の死後、裁判所に認知を請求する手続もあります。
なお、被相続人の子供がすでに亡くなっている場合、その孫又はひ孫が相続人となることがあります。
③さらに、被相続人に子供(孫又はひ孫)がいない場合には、被相続人の父母(いない場合には祖父母)が、配偶者とともに相続人となります。
④最後に、被相続人に子供(孫)も両親(祖父母)もいない場合には、その兄弟姉妹が、配偶者とともに相続人となります。もし、兄弟姉妹がすでに死亡していた場合には、甥や姪が相続人となることもあります。
⑤相続分は、配偶者と子の場合は1対1、配偶者と尊属の場合は2対1、配偶者と兄弟姉妹の場合は3対1です。
なお、相続人が誰もいない場合には、利害関係人の請求によって、家庭裁判所において相続財産の管理手続が行われる場合があります。
相続財産の典型例としては、現金、預貯金、不動産、自動車、宝石類、有価証券などが挙げられます。このほか、借地権や借家権、さらには、貸金債権や売掛金債権なども相続財産です。
他方、受取人が指定されている生命保険金は、被相続人が契約者であっても受取人固有の財産となり、相続財産には含まれません。また、会社から支給される死亡退職金も、社内の規定で受給者が指定されている場合には、その者(妻など)の固有の財産となります。
香典や弔慰金などは、その金額や性質によっても解釈が異なりますので、弁護士等の専門家に相談してください。
注意を要するのが、借金等の負債も相続の対象となることです。亡くなった方の借入や個人事業主としての買掛金の残金なども負の財産として相続することになりますし、亡くなった方が連帯保証人になっていた場合、相続人は連帯保証債務を相続することになります。
この場合、相続人全員で合意をして、特定の人だけが相続をするという遺産分割協議をしたとしても、債権者に対して、自分は相続していないからという理由で負債を免れることはできません。
負債が多く存在することが判明した場合には、家庭裁判所で相続放棄の手続を行うことにより、債務を免れることができます。この相続放棄の手続は原則として死亡時から3ヶ月以内に申請しなければなりませんが、延期の申請をすれば、さらに3ヶ月伸長することができます。また、死亡から3ヶ月以上経過していたとしても、債権者からの督促によって、初めて被相続人に債務があったことが判明した場合には、その旨を記載して相続放棄を受理してもらえる場合もあります。
ただし、被相続人名義の不動産の登記を自分名義に変更したり、被相続人の預貯金を費消した後で相続放棄をすることはできません。
多額の相続財産があることが明らかである場合には、相続税申告のため、相続人が税理士に依頼していることが多く、ある程度調査が進んでいるケースが多いものと思われます。
他方、自ら調査しなければならない場合には、さしあたり不動産を確認してみます。
自宅の土地建物がある場合には、法務局で登記簿謄本を取得し、名義の確認をします。なお、被相続人名義の不動産が一覧になっている名寄帳(土地家屋課税台帳とも呼ばれます)については、不動産所在地の市区長村役場の資産税課で取り寄せることができる場合がありますので、その手続を確認して下さい。
預貯金については、通帳があれば発行支店において残高証明書の発行を受けておくとよいでしょう。通帳がない場合には、年金や給与の振込先の銀行に照会をかけるなど、被相続人の生活圏に存在する金融機関を一通りあたってみるのも有効な方法です。
このとき、被相続人の生前の状況から貸金庫の契約などをしている可能性があれば、併せて問い合わせてみると良いでしょう。
そのうえで、預金履歴の取り寄せを行い、投資信託や株式の配当などの振込が窺える場合、あるいは生命保険金の引き落としなどがある場合には、証券会社や会社本店、生命保険会社等に照会をすることになります。
その他、自宅内に宝石や骨董品などの高価な動産類がなかったかどうか、同居の親族等から聴取してみるとよいでしょう。
他方、貸金業者に対する振込明細書や、借用証等が発見された場合には、当該業者や債権者に対し、いくらの残債務が残っているのかを照会し、プラスの財産と比較したうえで、相続放棄の手続をしたほうがよいかどうか検討することになります。
ただし、被相続人名義の不動産の登記を自分名義に変更したり、被相続人の預貯金を費消した後で相続放棄をすることはできません。
預金口座の名義人が生存している場合、例え名義人の家族であっても、原則として、成年後見人などの代理権を有する者でない限り、預金の払戻しを行うことは出来ません。それは行方不明の場合であっても同様です。
もっとも、金融機関によっては、被災された方の状況を踏まえて、預金者ご本人が行方不明になっている場合などに、預金者の家族と面談し、預金者ご本人の生年月日や家族との関係や事情を確認して、当面の生活費などの払い戻しを認めるなどの取り組みをしているところがあります。そこで、そのような例外的な扱いができないかどうかを確認してみてください
。そのような例外的な取り扱いが難しい場合、親名義の預金口座から子供が払戻しを行うには、代理権を有しない限り、「認定死亡」または「失踪宣告」によって相続が開始し、遺産分割協議などで当該預金を取得することが必要となります
。上記両制度のうち、「認定死亡」とは、水難、火災などの事変に遭遇し、死亡したことは確実だが、その死亡が確認できない場合に、その取調べを行った官公署(海上保安庁等)が親族の願出に基づき死亡の認定を行い、その報告に基づき、戸籍簿に行方不明者の死亡が記載される戸籍法上の制度です(今回の大震災でも利用される可能性があります。)。
他方「失踪宣告」とは、行方不明者の生死が7年以上不明な場合(普通失踪)、または戦争や大震災等の特別な危難に遭いその後1年以上生死不明な場合(危難失踪)に、利害関係人の請求により家庭裁判所が審判にて行方不明者を死亡したものとみなす制度で、今回の大震災は「危難失踪」に該当すると思われます。
大変辛い選択であるとは思いますが、生活のために預金の払戻しがどうしても必要であれば(生命保険金の請求などにも必要です。)、上記各制度の利用を検討されてみてはいかがでしょうか。
ご利用を検討される場合には、「認定死亡」であれば捜索を行った官公署に、「失踪宣告」であれば家庭裁判所や弁護士にその手続等を事前にご確認されますことをお薦め致します。
まず、これまで未成年の子どもに対して親権を行使していた両親が亡くなり、親権を行使する者がいなくなったわけですから、本人や親族が家庭裁判所に申し立てることによって、未成年後見人が選任され、身上監護や財産管理を行っていくことになります(従前の親権者と同様の権限を行使することになります)。実際には、当該子どもの親族など状況をよく把握されている方が選任されることになると思われます。必ずしもそのとおりになるとは限りませんが、選任申立時に候補者を指定することもできます。
次に、亡くなられた両親の相続が開始し、当該子どもがその両親の一切の財産(財産には住宅ローンや滞納している税金などの債務も含みます)を相続します。但し、相続する両親の財産のうち債務の方が多い等、相続放棄をしたり相続の限定承認をすべき場合もあります。そのような場合は、未成年後見人において当該子どものために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に相続放棄や限定承認を家庭裁判所で行う必要があります(未成年後見人が選任されていない場合は、未成年後見人が選任されて相続の開始を認識するまでこの期間は進行しません)。
最後に、震災遺児の支援制度ですが、現在、国や各地方自治体において具体的制度の構築について検討が進んでいるところです。現在存在する制度としては(必ずしも震災遺児を対象としているものではありませんが)、各地方にある児童養護施設での支援制度や各市町村が独自に行っている遺児支援制度(毎月一定金額の給付や就学助成等)があります。但し、各市町村によって具体的な支援制度の内容は異なりますので、お近くの市町村にお問い合わせください。」
大規模な地震の後には地震災害に便乗した詐欺が横行します。例をあげれば、不必要な住宅リフォーム工事の高額契約や、電力工事を装った電気修理などの高額請求、飲料水の水質が悪化している」とする浄水器の高額販売、「家屋の補修費や当面の生活費などを貸し出すので返済保証金を入金してくれ」という保証金詐欺や、公的機関を装った災害義援金の募集と称する詐欺などです。また、「原発から有害な放射線が大気にばらまかれている」というメールが携帯電話に頻繁に届くというチェーンメールもあります。
手口は通常の悪徳商法とほとんど変わりませんが、「震災」という言葉を使用して不安を煽られたり、被災者を支援したいという善意を逆手にとられてついつい契約してしまう危険性が高まります。
また、このような悪徳商法は災害の直後だけでなくしばらく続きます。特に高齢者の方や1人住まいの方が狙われやすいです。
このような話があればその場で契約したりお金を出さず、「後で確認してからにします」と断わることが大切です。便乗商法の被害に遭いそうになった時や被害に遭ってしまった時は、直ちに最寄りの自治体の消費生活センターや警察に相談してください。国民生活センターでは「震災に関連する悪徳商法110番」(0120-214-888)を実施しています。
また、住宅リフォーム詐欺や浄水器の高額販売などの被害に遭って代金を支払ってしまった場合でも消費者契約法による取消や特定商取引法によるクーリングオフ制度などによって契約を無効にして支払った代金の返還請求をすることも可能ですので弁護士に相談してください。
加えて、義援金は確かな団体を通して送るようにしましょう。チェーンメールについては報道や行政機関のホームページ等の信頼できる情報源を確かめ、これらのチェーンメール等に惑わされないようにしましょう。